二人は仲良し、ファコプスとスピリファ
標本No.1 〜デボン紀の巨頭会談〜

種類:ファコプス・ラナ・ミレリ(Phacops rana milleri)
碗足類(Brachiopods)のスピリファ等(Mucrospirifer sp.,etc.)
産地:米国オハイオ州ルーカス郡シルバニア
(Sylvania,Lucas county,Ohio,U.S.A.)
シリカ累層(Silica Formation)
時代:デボン紀中期(Middle Devonian),約3億8000万年前(380million years ago)

ファコプス・ラナ・ミレリ(Phacops rana milleri) はアメリカ産で
最も良く知られているファコプス科三葉虫でしょう。このHPのもの
は頭部の脱皮殻ですが、三葉虫はこのように殻を脱ぎながら成長して
いくので、生涯に複数の化石を残して行くことになります。示準化石
の鑑(かがみ)と言わずにはいられません。頭部殻の保存状態は良く、
複眼の様子も観察できます。これは碗足動物のスピリファとともに掘
り出されていて当時の海底の様子を彷彿とさせてくれる標本でます。

中央がファコプスの頭部、左上で向かい合っているのが碗足類のマクロスピリファ
です。 二人でいったい何のお話しをしているんでしょうね(って、殻なんだけど…)。
右下の黒く長いのはファコプスの体節部分で、バラバラに脱ぎ散らかしてあります。

えっとぉ、顔のアップです。眼の部分を見ると、複眼がきれいに分かりますね。
ケ〜ロヨ〜ン。(と、つい言いたくなる面構えだと思いませんか? え、古い?)
ちなみに、カエルさん(ケロケロ)の学名の属名部分は"Rana"といいます。

せっかくなので腕足類マクロスピリファ(Mucrospirifer sp.)もアップにしました。
ちょうど羽根を広げた蛾のように見えますが、上下2枚の殻を持つ海棲動物です。
この標本のものは表面が薄く黄鉄鋼化しており、金色に輝いてとてもきれいです。
二枚貝に似ていますが、貝とは全く違う生き物で内部に2本の碗足を持っています。
碗足類は形の違う上下2枚の殻を持ち、二枚貝は対称形の左右2枚の殻を持ちます。

周辺の体節部分などの殻も少し見てもらいましょう。
左上は別の碗足類、中央下は小さな頭部殻破片です。

小さな放射状のものはウミユリの茎の断片ではないかと思います。

ハイポストマ(口器)か?とも思ったのですが、よくわかりません。
で、ここまでが最初の標本(No.1)です。
実は似たものをいくつも持っているので別のものも見てもらいましょう。

標本No.2 〜謎のグルメなファコプス〜

これは同種の別の標本(No.2)です。
ちょうど鼻先のところに黄鉄鋼が結晶しています。

「お、なんだかおいしそう。モグモグ」
こらこら、お腹こわすぞ。

ウミユリの触手部分の断片ではないかと思います。
当時の海底の風景が彷彿とされてきます。

ちびっこの頭部脱皮殻も発見。
生涯に何回くらい脱皮するんでしょうね。

標本No.3 〜裏まで見せます!〜

ここから別の標本(No.3)です。

まずは頭部脱皮殻ですが、鼻先の細かい質感がよく写ってます。

下方のは黄鉄鋼化した別種の腕足類の殻です。きれいな金色をしています。
平坦な形状のオルトストロフィア(?Orthostrophia sp.)あたりでしょう。

裏側を少し掘って見たのですが、大きな石なのでまだ色々と出てきます。

これはウミユリの茎ではないかと思います。自信はないですが。
このシリーズの標本はまだ他にもあるんですが、3つで止めときましょう。


コラム3:化石って、高いの? 〜300円化石の世界〜
(念のため言っとくけど売らないよ!)

前にコラムでエルラシア・キンギは安く買えるという話を書きました
が、実際に化石ショップでいくら位で売っているのでしょう。新宿の
紀乃国屋書店1階に化石店があるのは東京の方ならよくご存じと思い
ます。ここのお店は東京サイエンスという化石・鉱物の会社のショー
ルームなのですが、エルラシア・キンギの一番安いものが600円でし
た。他に杉並のミネラル・ショップでは母岩付きエルラシア・キンギ
が500円でしたから、これくらいの値段からと考えてよいでしょう。
もちろん、同じ種類のものでも状態や大きさで値段は変わってきます
から、これよりもずっと高い値段のエルラシア・キンギもあります。
ちなみに、この上でお見せした石も1つ500円で入手したものです。

では、私はいくら位で化石を買っているかというと、三葉虫だと300
円からです。値段が3,000円を超える辺りでそろそろ悩み始めます。
では、以下で私が300円で買ったものをいくつかお見せしましょう。


(プロエタスの一種,Proetus sp./デボン紀,Devonian/モロッコ,Morroco)

プロ子ちゃん「何してるのぉ? いっしょに遊ぼうよぉ。」
プロ次郎くん「うんしょ、うんしょ。登っておいでよぉ。」
という会話があったやらなかったやら。ないってば/(^ ^;)
実は登っている訳ではなく、プロ太郎は丸まって防御姿勢
をとっているところです。各300円で同時購入しました。

三様虫は1.5cm位、母岩も2cm程度の非常に小さい化石です。
この種はプロエタスの一種(Proetus sp.)として売られることが
多いのですが、正しくはゲラストスの一種(Grerastos sp.)で、
プロエタス科の三葉虫は一番生息期間の長いグループでした。


(フントニア・オクラホマエ,Huntonia oklahomae/デボン紀,Devonian/米国オクラホマ州,Oklahoma,U.S.A.)

「なんだか、おいらの胸にポッカリ穴があいたようだぜ。
まるで体の半分を失ったような気分だよベイビー。」
なんてことをつぶやいているんだかどうだか。(つぶやかないって)
半身しかありませんが、左右対称なので各自想像力で補うよーに。
実は2つの破片をまとめたもので、300円+300円=600円でした。
特徴のある鼻先や尻尾の刺も残っているので鑑賞用の標本としては
悪くないでしょう。 これが割れてない完全体だと10,000円以上は
する種類ですが、これだけ安ければ私としては文句はありません。


(ホモテルス・ブロミデンシス,Homotelus bromidensis/オルドビス紀,Ordovician/米国オクラホマ州,Oklahoma,U.S.A.)


横綱ホモ乃湖「はっけよ〜い、のこったのこった!」
小結ブロミ桜「むぎゅう、ま、まいったぁ、降参!」
などという会話があったやらなかったやら。(だから、ないってば。)
これも2つの破片をまとめたもので、300円+300円=600円でした。
同様に完全体ならけっこうな値段がする種類です。こんな破片でも、
うまく揃えるとそれなりに鑑賞に耐える標本になってくれるんです。

今回はこの程度にして、いずれ「1,000円特集」とかもやってみよう
かと思います。ちなみに、あまり値段で化石を語るのも変だとは思う
のですが、この趣味で必ずというほど聞かれるのが値段のことです。

(These fossils are "Not For Sale!!")



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