ボヘミアの三葉虫

ボヘミアは19世紀頃から活発に三葉虫の研究が行われてきた地域です。
ボヘミアの三葉虫を、大型のもの小型のものとりまぜてご紹介します。



種類:ヒドロセファルス・カレンス Hydrocephalus carrence BARRANDE, 1846
産地:チェコ共和国ボヘミア地方Jince累層(Jince Formation, Bohemia, Czech Republic)
時代:古生代(Paleozoic)カンブリア紀中期(Middle Camblian Period)
約5億3千万年前(530million years ago)

パラドキシデス型の大型三葉虫で、この標本は体長15cm以上あります。
記載者のバランデ先生について下のコラムに簡単にまとめておきました。



種類:パラドキシデス・グラシリス Paradoxides gracilis (BOECK, 1827)
産地:チェコ共和国ボヘミア地方Jince累層(Jince Formation, Bohemia, Czech Republic)
時代:古生代(Paleozoic)カンブリア紀中期(Middle Camblian Period)
約5億3千万年前(530million years ago)

カンブリア紀を代表する大型三葉虫・パラドキシデスの一種です。
この標本では体長17cm程度ですが、最大30cm位になるそうです。
ちなみに記載者名が(BOECK, 1827)のようにカッコ内に書かれてある
場合は記載当時の属名が分類変更等で所属替えになったことを表わします。



種類:エリプソセファルス・ホッフィ Ellipsocephalus hoffi (SCHLOTHEIM, 1823)
産地:チェコ共和国ボヘミア地方Jince累層(Jince Formation, Bohemia, Czech Republic)
時代:古生代(Paleozoic)カンブリア紀中期(Middle Camblian Period)
約5億3千万年前(530million years ago)

2〜3cm程度の小型の三葉虫で化石の多くは密集して見つかります。
この種は標本店や鉱物化石フェアでも手ごろな値段でよく見かけま
すので、初心者のコレクターでも入手しやすいものの一つでしょう。



種類:コノコリフェ・スルツェリ Conocoryphe sulzeri sulzeri (SCHLOTHEIM, 1823)
産地:チェコ共和国ボヘミア地方Jince累層(Jince Formation, Bohemia, Czech Republic)
時代:古生代(Paleozoic)カンブリア紀中期(Middle Camblian Period)
約5億3千万年前(530million years ago)

5〜7cm程度の中型の三葉虫です。種名sulzeriの後にもうひとつ
sulzeriとあるのは亜種名で、種名・亜種名ともにsulzeriです。
属名は頭文字を大文字で書き、種名・亜種名は小文字で書きます。
地味なせいでしょうか、有名な割に化石市であまり見かけません。



種類:アウラコプレウラ・コニンキィ Aulacopleura (Aulacopleura) konincki konincki (BARRANDE, 1846)
産地:チェコ共和国ボヘミア地方Liten累層(Liten Formation, Bohemia, Czech Republic)
時代:古生代(Paleozoic)シルル紀ウェンロック統(Silrian, Wenlockian)
約4億3千万年前(430million years ago)

カンブリア紀の三葉虫ばかりでしたので、最後はシルル紀にしました。
1〜2cm程度の小型の三葉虫で、これもバランデ先生による記載種です。
カッコの中に書かれた2回目の(Aulacopleura)は亜属名です。亜属名が
書かれているということは、他の亜属があるということも示しています。
この種では、属名と亜属名、種名と亜種名ともに同じですから、通常は
ここまで細かく書かず、単にAulacopleura koninckiと書かれています。


なんだか、学名・記載名の読み方教室みたいになってしまって、
少々固いページになってしまいました。ブランクが長かったかな?

今回参考にした文献を下に紹介しておきます。
・原色化石図鑑(浜田隆士、益富壽之助 共著/保育社)
・Type Specimens of Fossils in the National Museum Prague 1 "Trilobita" (1970)
・BOHEMIAN TRILOBITES (Milan Snajdr/Geological Survey, Prague, 1990)



コラム4:三葉虫研究の父 〜ヨアヒム・バランデ〜
Joachim Barrande (11.8.1799-5.10.1883)

三葉虫研究の歴史では、ボヘミアは重要な地です。この地域からは、
カンブリア紀からデボン紀にかけての多種多様な三葉虫が見つかって
おり、19世紀中の大博物学時代からEmmerichやBoeck、Novakと
いった多くの研究者たちを生み出してきました。その中でも特に輝か
しい業績を残した人物がコラム表題のBarrandeで、これらの三葉虫の
系統的分類や、層序学的意義について優れた研究を残した人物です。

上の写真はバランデの手による論文の図版の一例です。

バランディアという属名の三葉虫がいますので、お見せしましょう。
下のパラバランディアの方はバランデが記載者という点が面白いです。
通常、自分の名を記載種名に冠することはできないのですが、他人が
つけた属名の同属新種を記載する分には問題ないということでしょう。

バランディア・ホムフレイィ Barrandia homfrayi HICKS, 1875
オルドビス紀、ランヴァーン統 Ordvician, Llanvirn series
英シュロップ州レイフ Leigh, Shropshire, England

パラバランディア・クラッサ Parabarrandia crassa (BARRANDE, 1872)
オルドビス紀、ランデイロ統 Ordvician, Llandeilo series
スペイン、シウダッド・リアル Ciudad Real, Spain

三葉虫の下に見えるのは腕足類(恐らくストロフォメナ ?Strophomena sp.)です。



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